金属アレルギー
金属アレルギーに対する患者さんの関心が高くなってきました。
歯科治療では、口の中のつめ物、かぶせもの、入れ歯などには様々な金属が使用されています。これらの金属は基本的には人体に無害なはずですが、アレルギーの原因になりうるということが、わかってきました。原因となる金属は、チタンをのぞくほとんどの金属です。金、プラチナ、パラジウム等貴金属でもアレルギーが報告されています。症状は、口の中では、舌炎、口唇炎、粘膜のびらん、口内炎などです。口腔外では、アトピー性皮膚炎、紅斑、湿疹などが手や足に現れます。
治療
大学病院と協力して治療を進めます。数種類の金属元素を皮膚の上に塗るパッチテストを行います。反応のあった金属を含む歯科用合金でできた冠や充填物を取り除き、安全な、セラミックかチタン100%の冠や充填物に置き換えます。
症例
アレルギー症状はステロイド軟こうの使用により、一時的にはよくなります。しかし、金属アレルギーの場合、原因となる金属が体内にある限り何度でも再発します。ですから、金属アレルギーの治療は、原因となっている金属を除去する以外にありません。下の写真は、他院で左下の冠をセットしてから右上腕に発赤とかゆみを生じた患者様で左下の冠の溶出傾向を測定したところNiCr(ニッケルクロム)とSILVER(銀)の溶出傾向が高かったためニッケルクロムと銀による金属アレルギーの可能性が高いと判断し、金属を撤去しハイブリッドセラミックスによる冠に置き換えました。
2~3週間後には右上腕に発赤とかゆみは消失しました。
金属アレルギー由来の掌蹠膿疱
金属アレルギーは接触している部位だけでなく口腔内の金属がイオンとして滲出して汗腺の多い手指、足の裏に水泡や膿疱として出現することがある
但し、掌蹠膿疱は病巣感染からも出現するため、病巣感染がないことは確認しパッチテストを行い口腔内の金属と照合して口腔内の金属は撤去する
金属アレルギー由来の掌蹠膿疱 症例1
2023年2月15日 術前のパノラマレントゲン写真
2024年1月6日 術後のパノラマレントゲン写真
原因となった金属を除去し、チタンと樹脂系の材料に変更しました。
金属アレルギー由来の掌蹠膿疱 症例2
メタルコアに使用したダンホワイト(歯科用合金)、12%パラ(保険診療で一般的に使用されている金属)にもCo、Crは含まれていない
但し、両者のその他の金属に含まれていたと思われる。
撤去後症状改善。
※病巣感染の可能性もあり、その場合はこのような結果を得られない場合もあります。
金属アレルギー由来の掌蹠膿疱 症例3
人前で手を見せられず、いつも手袋を着用されていましたが、必要なくなりました。
※病巣感染の可能性もあり、その場合はこのような結果を得られない場合もあります。